疑惑のエンブリオ

2005.12.05

ルーンミッドガルドで最も有名なアルケミスト、Gan教授(セージキャッスル/アルケミストギルド)が先月発表した論文に捏造があるのでは、という疑惑が持ち上がり、各所に波紋が広がっている。

疑惑となった論文は、先月シュバルツバルド国立アカデミー専門誌「Alchemy」に掲載されたもので、初めて人工的にエンブリオ細胞(以下EM細胞)の作成に成功した、というものだ。
この論文に対して、セージキャッスルの複数の研究者から、論文に添付されている写真に捏造があるのではないかという指摘の声があがっている。これに対して、Gan教授は「細胞の写真を撮影する手順に若干不適切な点があったが、捏造などは全く行っておらず、我々がEM細胞の作成に成功したことは間違いない事実である」と真っ向から反論している。これを受け、セージキャッスルとシュバルツバルド国立アカデミーは共同で調査チームを発足させ、Gan教授の研究チームの調査を開始した。なお、Gan教授は今年度のJobMaster祭2005のアルケミスト部門に選ばれることは間違いないと見られていたが、JobMaster選考委員は今回の疑惑を受け、真相が明らかになるまでは判断が出来ないとして、今年度のJobMaster候補からは除外すると表明している。

EM細胞とは、全てのホムンクルスの核となる細胞で、今までもモンスターの細胞を培養することで得られていたが、育成に多大な費用と時間がかかり、また育成の成功率も極めて低かった。だが、Gan教授の手法は植物細胞からEM細胞を作成するという全く新しい方法であり、これにより従来の手法に比べて格段に低コストでかつ高確率でEMを作成できるという。この手法の導入により、ホムンクルスの実用化も秒読み段階といわれており、全国で活動するアルケミスト達の間で期待が高まっていた。ホムンクルスの実用化には倫理上問題がある、などの反対意見も根強い中、Gan教授の研究成果は実用化に向けての大きな推進力となっていただけに、もし今回の研究に捏造があることが明らかとなれば今後のホムンクルス計画に大きな影響を与えることは必至の情勢だ。


渦中のGan教授
また、Gan教授はルーンミッドガルドで数少ない、クリエイターの称号を名乗ることを許された国民的英雄であり、国内にファンも多いため、衝撃と混乱は学術界に止まらず、市民の間にも広がっている。今回の件をうけ、Gan教授の出身地であるフェイヨンなどを中心に、教授の熱狂的なファンによる抗議デモなどの騒動が勃発し、治安部隊との衝突が相次いでいる。デモの参加者であるフェイヨン出身のアルケミスト志望のある商人は、「Gan教授は僕の最も尊敬する人物であり、あの方が捏造を行うなんて信じられません。きっとライバル研究者による陰謀に違いありません」と語っている。また、教授の研究に疑問を呈した人物の自宅に矢が撃ち込まれる等の事件も発生しており、国王トリスタン3世は、「我が国の英雄の衝撃的なニュースに国民が動揺するのは仕方ないことではあるが、決して感情的に行動することなく真相の解明を静かに見守って欲しい」と異例のコメントを出している。果たしてGan教授の研究は事実なのか、自体の解明を国内外が固唾を呑んで見守っている。

文責:Fine=Broad


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