ミッドガルド大陸のミステリー

2005.10.23

ルーンミッドガルドに流布する都市伝説について、昨年に紹介した記事を覚えていらっしゃるだろうか。

あの記事の後に読者からこのような話を聞いたことがあると多数の投書が寄せられ、MNN社内ではミッドガルドミステリー調査班(通称、MMR)を結成し、これら情報をもとにミッドガルド大陸に散らばる謎に対する調査を開始した。

今回はその調査の途中報告をさせていただきたい。



満月の夜に歌う者

ゲフェンタワーが夜間になると閉鎖されているのは昨年の記事(夜は封鎖されているゲフェン塔、最上階)でも紹介した。実際は最上階のみでなく魔術師ギルドが管理する階層すべてが、夜間になると一般人の立ち入りを禁止している。

しかし満月の夜にふとゲフェンタワーを見上げると、閉ざされているはずの塔内部の窓辺に白い女性の人影が立っていることがあるという。

その人影を見たものは口を揃えて、あれはエルフだという。遠めで見ただけでも神秘的な雰囲気が漂い、人間ではないことを示すように両方の耳が槍の穂先のように尖っているのだそうだ。

彼女は時折歌うこともあり、その歌声をゲフェンの住民は『古き人々の詩』と呼んでいる。


ゲフェンがある地にはゲフェニアと呼ばれるエルフの都があったと言われている。ゲフェニアは滅亡し、その痕跡がゲフェンタワー地下の最深部にあるというゲフェニアダンジョンに残されているという。

この満月の夜のエルフについては、ゲフェン住民には周知の事実であるらしい。住民数人に尋ねるだけで、だいたいの情報が集まったほどである。

だが、彼女が現れるというゲフェンタワーの魔術師ギルドにこの件について質問してみたところ、「そのような事実はありません」との回答であった。
魔術師ギルドぐるみでのなんらかの関与が為されていると考えられ、現在も調査を継続中である。



人喰いの館

アルデバランからジュノーへと向かうエルメスプレートの中腹に打ち捨てられたような館が立っているのはご存知だろうか。

この館はキルハイルの別荘と呼ばれる建物で、40年ほど前にキルハイルというセージが当時はまだ認められていなかった生体工学の実験を行うべく、人里離れたこの地に館を構えたのだという。

このキルハイル氏は優秀なセージではあったが、生体工学の件で中央からも冷遇されており、また実験がうまく進まないこともあり、心労がたたって次第に精神を病んでいったのだと言う。

こんな話がある。キルハイルが館付近の村にて元気の良い少年を見つけ、その両親に「この少年を売ってくれ」と言ったというのだ。当然のことながら両親がそれを断ると、ブツブツと文句を呟きながら立ち去った。しかしその3日後に少年は村から姿を消してしまったのだ。

先の件もあり、両親を一念発起してキルハイルの館を訪ねてみたが、思いとは裏腹に彼は留守だった。だが館の中からは何かしきりに音がするので、格子戸の閉じていなかった窓から中の様子を探ると、中で何かが蠢いているのが見える。

何かしらの生物であるようだが、奇怪極まりない姿だったそうだ。
その生物は窓の外の人影に気づくと動きを止め、驚愕していた両親に言った。

「お父さんお母さん」


件の館がキルハイルの別荘と呼ばれているのは事実であるが、ジュノーの賢者学院に保管されている過去の名簿にもキルハイルという人物は存在しない。

アルケミストの可能性も否定できないので、アルケミストギルドでも調査を行ったが結果は同様。付近の村に館の事を聞いても噂以上に詳しい情報は得られなかった。

ただ、調査によって行方不明事件が確かに起こっていることが判明した。セージに転職するべく、アルデバランからジュノーを目指すマジシャンが年に数名ほど館の付近で消息を絶っているのである。

エルメスプレートは強力なモンスターが生息しているので、その犠牲になった可能性の方が高い。しかし…本当にそれだけなのだろうか?



第13懺悔室

新月の晩、12時を知らせる鐘が鳴るころにプロンテラ大聖堂の第13懺悔室に入り、死を願う相手の名前を告白する。

神はその願いをもって告死天使を遣わし、相手を死に至らしめるだろう。

ただし悪戯にこれを行う者があれば神は怒り、その者に告死天使を遣わす。


プロンテラにて囁かれる噂のひとつ。

噂とはいえかなりの広がりを見せているようで、プロンテラ大聖堂の主任アコライトの話では新月の夜に大聖堂にやってくる人物が多少なりともいるとのこと。

ちなみにプロンテラ大聖堂はクリスマスなどの特別な行事の日を除いて、夜間の礼拝は出来ないようになっている。

また懺悔室は12室しか設置されていない



消えた飛行船

シュバルツバルト国籍の超豪華旅客飛行船Dameblanche(白い貴婦人)号は、招待した要人60名と乗務員100名を乗せ、リヒタルゼンよりジュノーに向かっての処女飛行に飛び立った。

Dameblanche号はその名が示すとおり、白い優美な船体を持ち、その内装は贅を尽くしたもので、企業都市であるリヒタルゼンに来訪する要人を乗せるためにレケンブル社が発注し、運行までするというどこまでも型破りな飛行船であった。
その処女飛行にあたっては細心の注意を払うべく、船長をはじめとした乗組員のすべてをベテランの中から選抜して搭乗させるほどであったという。

しかし僅かに数時間の飛行のはずであったが、到着時刻になってもDameblanche号は姿を現さない。不安を抱く管制官たちの元へと通信が届いた。

「現在位置がよく分からない。航行用の羅針盤がクルクル回って正確な方向を示さないんだ。周囲は白い霧に覆われてしまって目視も出来ない。完全に迷った」

この通信を受けて、リヒタルゼンとジュノーの双方から待機中の飛行船を捜索に向かわせたがその後連絡がとれず、また捜索に向かった飛行船もDameblanche号を発見できなかった。Dameblanche号からの通信とは異なり、快晴で見晴らしのいい状況であったにもかかわらず。

当時はグレムリンの襲撃などで墜落した可能性なども考慮されたが、Dameblanche号の墜落した形跡は終ぞ見つからず、現在も行方不明として扱われているのだそうだ。


シュバルツバルト共和国からの飛行船航路開通まであと少しといったところであるが、そんな飛行船にまつわる話である。

この件をシュバルツバルト共和国の信頼できる情報筋に問い合わせたところ、リヒタルゼンに本社を置くレケンブル社がDameblanche号なる飛行船を発注したり、運行したという事実はないそうである。ましてや、その船名の飛行船が存在した形跡すらないとのことで、まったくの創作と判断される。

だが原型となったであろう話については発見することが出来た。
アルベルタ-アルデバラン間の海域にて豪華客船Adelaide(貴婦人)号が処女航海の折に消息を絶ったという事件があり、現在も行方不明になっている。これがいつのまにか飛行船にすりかわってしまったのではないだろうか。



もうひとりの自分

元冒険者であるSamuel神父がある日、血まみれの姿でゲフェン騎士団の詰め所へとやってきた。
話を聞くと、引退後に布教活動の場としていた開拓村の住民を30人ないし20人以上殺害してしまったのだという。

騎士団は尋常ならざる告白にSamuel神父の身柄を確保するとともに、彼が活動していた開拓村に調査の兵士を向かわせ、驚愕の事実を知ることになる。

ゲフェン近郊のその開拓村には新天地を求めてやってきた農民の家族20世帯、約76名が住んでいたが、その約1/3である7世帯24人が神父の手によって一晩で殺害されていたのである。

Samuel神父は高齢のために冒険者を引退し、残りの生涯を辺境での布教にささげるため、この開拓村に居を構えていた。彼は村の仕事を手伝うなどして積極的に村人と交わり、その真摯な態度に村人もまた彼を受け入れていた。

その彼が何故村人を殺害するに至ったのか、取調べにおいてこのように証言している。

「自分ではない誰かが、自分を操っていた。気がついたときには私は血塗れで立ち尽くしていて、武器についた血で何をしてしまったのかを理解した」

また、襲われつつも間一髪危機を逃れた村人の話によれば、神父はまるで別人のように恐ろしい顔つきで襲い掛かってきたのだという。

しかしながら調査にあたった騎士団では、これら神父の証言を罪を逃れるための偽証と断定しているとのことだ。


この事件のように自分ではない誰かに操られ、普段では考えられない行動に出るという事例は多く、前触れもなく溜め込んだ財産や揃えた武具を放り出してしまうなどの話を読者諸兄も聞いたことがあるのではないだろうか。

専門家はこれを『自我変異』と名付けて対処の検討を王国府に要請しているが、王国府はそんな事象は起こりえないと一貫した体勢で臨んでおり、件のSamuel神父は大量殺人の罪で死刑に処される可能性が高いという。



グラストヘイムの青竜

かつて神々の居城であり、1000年前の大戦にて闇の軍勢の手に落ちたグラストヘイム古城。

現在は冒険者の立ち入りが自由に行うことができるが、解放されたばかり頃にグラストヘイムに赴いた冒険者たちに奇妙な噂が囁かれていた。

曰く、大規模な集団が戦っているような剣戟の音や鬨の声が遠くから風にのって聞こえた。
または、モンスターの集団と戦う軍隊と思しき騎士や兵士の集団を見た。
などである。

モンスターと戦っていた騎士たちは青地に竜が描かれた軍旗を掲げていたという。


ルーンミッドガルド王国は幾度となくこの古城に巣食うモンスターを駆逐せんと兵を上げており、解放より1年ほど前(今から4年前)にも王国各地より兵を集めての大攻略作戦が展開された。

残念ながら現在も古城にモンスターがいる状況が示すとおり、この攻略作戦も動員した兵力の約2割を損なうという大損害を受けて失敗に終わった。

攻略軍の撤退にあたって、アルベルタ第2騎士団所属の第3大隊(通称:青竜大隊)は全軍の殿を務めて最後まで奮戦し、大隊長以下将兵全員が未帰還という文字通り全滅した。(本来、兵力の損耗率3割が全滅といわれる。兵力の損耗率10割の場合は殲滅もしくは玉砕というのが正しいらしい)

青竜大隊の名が示すとおり彼らは青地に竜が描かれた軍旗を掲げていた。

噂は恐らくはこの話が下敷きになったものと思われるが、グラストヘイム解放から3年が経過しようとしている今でも報告は後を絶たない。



謎の生物!アマツに出現!

今年の3月から9月末にかけてアマツでは不思議な生物が頻繁に目撃されていた。

目撃者が描いたスケッチを入手することができたので紹介したい。

目撃者によるスケッチ。2匹で行動している姿がほとんどだという。親子なのだろうか?

我々MMRは現地に飛んでこの不思議な生物の姿を捉えようとしたが、10月に入ってからはほとんど目撃例はなく、取材は空振りに終わった。

かろうじて目撃者の方に接触することが出来たので、スケッチをお願いして掲載した次第である。

ある冒険者はこの生物に遭遇し、モンスターだと思って撃退したという話も入手した。
その話によればこの生物は、倒されると吸い込まれるように消えてしまい、『逆立った魚の形した金の置物』と『ういろう』というお餅のような食感の甘い食べ物。『りにも』なる謎の箱状の物体をドロップしたそうである。

我々MMRは今後もこの生物を追いかけ、正体を探っていきたい。

[Text by トウコ=ミツキ]

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