「異臭がする」と報告を受け駆けつけた警備兵は、
美しいプロンテラ中央公園の変わり果てた姿を見て愕然とした。

公園には初代トリスタン王の像がそびえたつ立派な噴水があるのだが、
そこから噴出す水が下水管の破裂により、糞尿まみれになって溢れ出していたのだ。
現場では酷い悪臭が漂い、仕事を押し付けられた下水処理の人間が泣きながら清掃作業にあたっていた。

噴水の水が通る水道管の近くには下水管が通っており、
それが何らかの原因で破損してしまったものと見られている。

清掃作業に当たった下水処理員のStringerさんは「最初は、本当に私達がやらなくてはいけないのかと思った。
救いを求めるように周りを見渡してみても、遠巻きに眺めるギャラリーは同情の眼差しで私達を見ているだけだ。
下水処理の仕事についてもう１５年になるが、こんな酷い仕事をやらされたのは初めてだ。
でも私達がやらなければ、美しいプロンテラは戻ってこない、そう言い聞かせて我慢してやったよ。
人間ってやろうと思えば何でも出来るんだなって思ったよ。
とにかく、今は何もかも忘れて休みたい。今日非番だった仕事仲間が羨ましい」と力の無い声で語った。

ギャラリーの一人は「下水処理員の姿は本当に哀れだった。それを見た何人かの市民が彼らに協力していたが、
大多数の人は顔をしかめて眺めているだけだった。私もそのうちの一人さ。
今回の事件で、下水処理がどんなに大変で、どんなに我々に必要かってのがわかった気がするよ。
とにかく清掃にあたった下水処理員の方、住民の方、お疲れ様。そしてありがとう。
トリスタン王は彼らに勲章でも与えるべきだね」と語る。

プロンテラは下水管の破裂の原因は何か、配管に問題は無かったかなどを調べていく予定。

公園は昼間、商人の商売や冒険者の語らいの場として利用され、
夜九時になると美しくライトアップし、公園前は恋人達で賑わう、プロンテラ一の人気スポットだった。
プロンテラでは２日後に隣国の大使を招く予定があり、なんとしてもそれまでに片付ける必要があった。
現在では殆ど清掃は完了しており、公園はいつもの落ちつきを取り戻しつつある。